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天上ノ海中



 とてもとても大きな雲が、すっかり空を覆ってしまった。
 どれほどに分厚いのか、時計は正午を指しているのに星も月もない夜よりなお暗い。
 確かめたくてポンコツの水上機で雲の中に入っていった。
 信じられないことにそこには海が広がっていたんだ。それも澄みきった。
 種々様々な生き物が息づいていて、多分ここが天国なんだと思う。だから虹の橋を架けてそいつを柱の代わりにしちまった。
 空の上の海の彼方、そんなところが僕らの街の上にある。
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愛スベキ世迷言



『なんで愛がこの世で一番素晴らしいか知ってるか?物や土地と違って税金がかからねぇからさっ!』
――僕らの街の路地裏の落書き――

七十三人ノ悪党



 悪くなったところから交換していった僕の身体。
 右手はさる貴婦人の、左手はプロボクサーの、二の腕は小説家のもので、肩はプロレスラーと、全部で都合七十三人分が僕を形作っている。
 故に。夜な夜な右手が夫の愛人だった僕の首を絞めるのも、仕方のないことではあるのだけれど。肩も笑ってないで止めて欲しいものだ。

詩聖ノ街



 この町ではありとあらゆるものの婚姻が許されているから。
 生と死が結婚してしまって、この町の住人は生き続けながら死に続ける羽目になったのさ。

有線デ送ル



 ある日僕に電線が繋がっているのに気付いた。
 この時代に有線だなんてこのへその緒は母親に繋がっているのだろうかと、たぐり寄せていった。
 電線の始発駅は何の変哲もない火力発電所で、あぁなるほど道理で僕、昨日のご飯も思い出されないわけだ。

指輪ノ星



 金剛石でできた星から、オンボロの宇宙船に金剛石をたくさん積み込んで。
 向かう先は空を失くした小さな白金の星。
 辿り着いたならば積み荷を浮かべて、金剛石の空にしてさしあげる。
 そしたらこの星に大きな穴を開けて、指輪に仕立てあげ、彼女に贈るのさ。

都市ハ偽物デ空ハ紛イ物



 ダイマクション地図を広げて、その上に架空の都市を建造するんだ。
 ダイマクション地図を広げて、架空の都市の方に歩いていく。
 架空の都市は確かに在ったけれど、作った覚えのない架空の奴らばかり闊歩していて、空とか緑だった。

詩集ノ刺繍



 詩集を記事にした僕の服は、風にさらされて。素敵な言葉を風にさらわれるのに任せていた。
 そいつを拾い集めて遠くの町に辿り着いた時、子供が詩を口ずさんでいたから、刺繍にすることは止めたんだ。

悪党ノ贈ル愛



 万人のために祈りを捧げて、奇跡で何人をも救う聖女と呼ばれる女の子。今日も石造りの建物の中、遠くの空を眺めてる。
 罪にまみれた悪党の僕らより、彼女の方がずっと罰を受けているようで。
 彼女のささやかな夢は、いつか白馬に乗った王子様が迎えに来てくれることだなんて、きっとどんなに普通な女の子だっていつの間にか捨ててしまうような幼いものだって。
 僕はぐいっと伸びを一つ、背骨を十分柔らかくして、あくびと共に目やにを擦って、ねぐらを見回し。
「さぁ聞いたか野郎共、本日のお仕事は王子様の誘拐だ。おっと立派な白馬もお忘れなく、東の野原の三才牝馬が良い毛並みだったぜ。」
 って。もちろんその後は聖女と王子様の愛の障害となり、最後に打ち果たされる最高の役は僕のもの。

空ノ眼



 義眼を大量に積んだジャンボジェットが高度10000メーターで爆発したってさ。
 パイロットはパラシュートで脱出して無事だったらしいけれど、義眼はプカプカ空に浮いたまま、僕らをじっと見ているというのだから、こんな莫迦な話はない。

暇ナ穴



 まずい奴に見つかった。逃げろ逃げろ。
 必死に走って跳んで転んで、殺風景な所でとうとう僕に捕まった。
 僕はそのままお腹にくっつけると、また僕のへそとしてやることのない毎日が始まってしまった。

赤ノ世界



 夜と待ち合わせ、場所は好きなところでいいってさ。
 夕焼けの空の頃、夜から連絡が来て体調崩したとのこと。それじゃあ仕方ないからお大事にとだけ行って、いつまでも赤く染まった公園で一人煙草を吸っている。
 こんなのがいつまでも続くらしいと、未だ帰らない子供たちにホラを吹きながら。

稼業ヲ接グ



 灼熱の熱砂、黄金の砂漠のオアシスに、一世紀に一度、小さな氷が出来るらしい。
 その氷は、わずかな砂漠の水を独り占めした、花、みたいな、八重咲きの花びらを纏ったかのような美しさで。
 その花びら、一片一片それぞれ味の違う素晴らしい珍味と聞く。
 ならば僕のやることは決まっている。まずは予告状を送りつけ、入念に下調べ。
 変装は僕の流儀に反しているから、いつもの銀河模様のトレンチコートで堂々と正面から馳せ参じるのさ。
 並み居る警備を出し抜いて、地元の少女を味方につけて、いくつかドンパチ繰り広げたなら、最後に手にしますは砂漠の氷。
 鼻持ちならない金持ちを退けて、普段オアシスに暮らす呑気な人たちと一片一片じっくりと味わったら。何とも酸いも甘いも十重二十重と絶品で。
 石油の中を泳ぐ魚が居るとオアシスの人たちに教えてもらって僕はまた旅立つ次第。

影ト成リテ



 絵の具を固めて怪獣を作ったら、そいつが壊すための町を絵の具で作る。
 色彩の町の中、絵の具と混じりあって真っ黒になった僕は、疲れて横たわり寝付いたならば色彩の町の夜となり影となり。

消エタ町



 お星様にも故郷が有って、そこでは老いたお星様が小さなお星様を育てているんだけれど。
 心ない人に見つかっては大変だから、お星様の輝きの見えないような快晴の白昼でしか、誰も出歩かないんだ。
 僕はここにやって来ては、十分に育ったお星様を空に連れてくんだけれど、今日と来たら誰も居なくて。
 そう言えばしばらく雨雲が続くから、いつものように町ごと消えると言う話だった。昼間に星が見えるまで、雪原に寝そべってお酒をやることにした。
 今度は何座を作ろうか。

人ノ夢ノ儚サ



 老人が墓を漁って、死体から生前の夢を取り出しては、夢やぶれた人々と夢の交換をしている。
 何のことはない、老人である彼も夢を見たいんだ。とっくに忘れてしまった、とっくに無くなってしまった彼の故郷と幼馴染みの女の子の夢。
 でも彼が今日、僕に手渡してきた夢こそが、白黒写真に写っていた風景のはずで、きっと忘れてしまったから気付けなかったんだろ。
 いつか彼が墓穴で暮らし始めたら、そっとこの夢を忍ばせようか。
プロフィール

調子

Author:調子
男。178cm、57kg。昭和六十年生まれ。
喫煙者、飲酒家、博打打ち。ろくでなし。
好きな風呂は檜風呂。
愛車は1985年製のSR500。
けれども俺はヒノキ花粉症。おのれひのきめ、いつの日か必ずや檜風呂にしてケツに敷いてくれる。そろそろここに書くネタがないや。
著作権は特に主張したりとかは、ないです、短いからかぶってそうなこともありそうだし、何よりそんな暇があれば、次のを書く。もちろん侵害する気もないのではからずも盗作になっていた場合には対処します。
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