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煙管ヲ貰ッタ



 キンキン。キンキンと鋼を鍛える音がする。
 鍛冶師たちはヒヒイロカネを作らんと、汗の滝を作りながら、黙々と鋼を打ち続けている。
 僕と僕の友人はその音をぼうっと眺めながら、煙草をくゆらせている。
 すぅっと吐いた紫煙がふらふらと鍛冶師たちの元を訪ねると、興味深そうにその姿を眺めては、どうしてなのか、打たれる鋼と槌の間に潜りこむ。
「コイツめ!」
 鍛冶師が紫煙にどなるけれども、槌は止まらず、鋼に紫煙は打ち付けられた。
 すると、そこから鋼が輝き、紫色を響かせた。
 僕と僕の友人はそれを眺めて、ケラケラ笑った。
 それが気に触ったのだろう、鍛冶師が僕と僕の友人の煙管にその鋼を打ち付けたものだから。
 それからというもの、僕と僕の友人の煙管は、刻みを入れなくても、紫煙がぷかりと浮かぶのだった。
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怪物ノ虚言



「言葉にするに恐ろしい怪物が居るよ。」
 気の触れてしまった友人が僕に言う。
「三角の胴体に首と頭の区別なく、大きな目玉の怪物が居るよ。」
 気の触れてしまった友人が僕に言う。
「口には牙を揃えて、手足は細い怪物が居るよ。」
 気の触れてしまった友人が僕に言う。
「その怪物に捕まると頭からかじられて、ガリガリ、ガリガリと咀嚼されてしまうよ。」
 気の触れてしまった友人が僕に言う。
「でも足首から先は決して食べないんだ。」
 気の触れてしまった友人が僕に言う。
 僕は聞きたくなくて、耳を塞いでいたのだけれど、彼の言葉は粘ついて耳から離れない。

 数日後、彼が足首から先だけを残して死んだと聞かされた。
 それでも僕は信じない。
 信じてしまえば、認めてしまうことになってしまうから。
 電灯の下、僕の部屋をじっと見つめる、三角姿の怪物を。








偉大ナ先祖



 ギターの奴が、突然言う。
「俺の先祖は弓だったそうだ。ならば俺とてやってやれぬことはない。」
 そういって矢を引き絞り、えいやっ、と気合一発。
 虚空を舞う小鳥一匹落とせはしなかったが、F#m7が虚空を舞って。
 その日から、空には鳥と、矢と、F#m7が飛んでいる姿を、たまに見かける。

軟派ノ謀



 腕時計と手をつないだ僕が往来を歩いていると、日傘と肩を組んだ女性が向こうから歩いてくる。
 会釈を交わす僕達を見て、太陽は苛立ったようで。
 時計などしなくても良いと、地面に大きな影を落とし。
 日傘などしても無駄だと、水面に小さな輝きを落とし。
 僕と彼女は微笑み合って、僕は腕時計の文字盤に目を落とし、彼女は日傘で顔を隠した。
 それで太陽が泣いたから、僕の腕時計は雨では用をなさず、彼女も日傘で覆いきれずに服を濡らした。
 僕と彼女は肩をすくめて、近くの喫茶店に入ることになって。
 僕は背中越しに太陽にサムアップすると、雲の合間から太陽光線一つ、僕の目の前に差し込んだ。

視ラレル深淵



「ご覧よ。良い景色だろう?」
 僕の友人である盲目の男が指差したのは、どこまでも深いポッカリ開いた大穴で。
 彼には何が見えているのかと、聞くに聞けない。

臆病ナ病



 地面をベリベリと剥がしていたときの事。
 大勢の鳥がやって来て。
「地面を剥がしてどうするつもり?あなたには空を舞う翼もないじゃない。」
 無視して地面をベリベリ剥がす。
 大群の魚がやって来て。
「地面を剥がしてどうするつもり?あなたには海を踊る鰭もないじゃない。」
 無視して地面をベリベリ剥がす。
 とうとう剥がす地面もなくなって、剥がした地面で海と空を埋め立てた。
 朝昼には太陽に、夕夜には月と星に。睨まれ続けて気の狂った僕の話。

魔法使イノ彼女



 僕の知り合いである彼女は、お母さんに教えてもらった魔法を使う。
 タンバリンを打ち鳴らせば、皆を幸せにして。
 チョコレートを味わったら、動物と話が出来る。
 フリル付きリボンを巻けば、無機物だって歌い出す。
 そんな彼女を朝もやの中で、見守りながら賭け事に興じて。
「きっと明日は雨だろうから、晴れにしてくれないか。」
 頼んだ僕に微笑んでくれて、パンプスで足踏み。
 晴れることには晴れたけど、懐に吹く風までは止めてはくれなかった。

感謝ノ帆布



 潮騒をハサミで切り取ってポケットに入れた。
 貝殻を拾って耳に当てた。
 浜辺から旅立つブリキの船に乗る。
 眼前に広がる海を手で丸めて、コーラのボトルに封じ込め。
 海を見たことがないと言う乗客の中の小さな女の子に、潮騒と貝殻とボトルをプレゼント。
 女の子は笑って、ありがとうをくれた。
 ありがとうを結んで繋いで。
 それを素敵な帆布にして、ブリキの船は風を受け、僕の知らない幸せの国に。

時刻ヲ告ゲル



 僕の腕時計は皮肉屋で。
「僕と君では何が違う?」
「時間に縛られているのと、時間を刻んでいるとの差さ。」
 僕の腕時計は皮肉屋で。
「僕以外なら誰につけられたい?」
「君以外なら誰でもいいさ。」
 僕の腕時計は皮肉屋で。
「君より素敵な腕時計は見たことがないよ。」
「そう、見る目がないんだね。」
 その癖、僕と同じ時間を刻んでいる。
「勘違いだよ。」
 そうかもしれない。
プロフィール

調子

Author:調子
男。178cm、57kg。昭和六十年生まれ。
喫煙者、飲酒家、博打打ち。ろくでなし。
好きな風呂は檜風呂。
愛車は1985年製のSR500。
けれども俺はヒノキ花粉症。おのれひのきめ、いつの日か必ずや檜風呂にしてケツに敷いてくれる。そろそろここに書くネタがないや。
著作権は特に主張したりとかは、ないです、短いからかぶってそうなこともありそうだし、何よりそんな暇があれば、次のを書く。もちろん侵害する気もないのではからずも盗作になっていた場合には対処します。
拍手コメントの返信は土曜日に一括でやらせて頂きます。ご了承ください。

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